100年後にモルディブが沈没!?水位上昇への対策は【水上都市】!
地球温暖化の影響による環境問題が話題に上がり始めて、世界各国で様々な協定が結ばれているほどです。日本でも、二酸化炭素の排出量についての協定『京都議定書』が結ばれました。
そんな地球温暖化の中でも深刻な影響を与えている問題の一つに海面上昇が挙げられ、海抜1メートル以下の沿岸部は2100年までに水没してしまうという研究結果も発表されています。
人気のリゾート地であるモルディブもそんな水没が心配されている島国の一つです。
今回は、そんなモルディブの水没危機と水没への対策について解説していきます。
モルディブは100年以内に水没する危険がある
モルディブは約1200の島からなる島国です。島の8割が海抜1メートル以下で、気候変動の影響で『2100年までに最大で1メートル余り海面が上昇する』と予測されてきており、国土のほとんどが水没の危機にあります。
つまりは、1m海面が上昇するとモルディブの国土の80%が失われてしまうということですね。
海面は主に2つの要因から上昇していて、1つが気温の上昇に伴う海水の体積膨張、もう一つが、寒冷地方に存在する陸上の氷が溶け出すことです。
この2つは、どちらも地球の気温上昇が原因です。
そのため、海面上昇を抑制するためには「気温上昇の原因である温室効果ガスの排出量減少」が必要とされ、国際条約でそれぞれの国に減少量のノルマが課されています。
温暖化の被害は土地だけでなく漁業にも及ぶ
一方で、温暖化がもたらす影響は低地の水没だけではありません。海水温の変化等によって世界全体の海洋生物の生産量が減少する可能性があるのです。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の発表では、温暖化に対して何も対策をしなかった場合、2100年には海洋生物の漁獲量が最大で約25%も減少すると試算されています。
モルディブは観光業に次いで漁業が国の主要産業で、2018年のデータでは輸出産品の実に96%が水産品というデータもあります。更に、モルディブは魚の1人あたり消費量が世界で1位の国です。
(出典:外務省モルディブ共和国基礎データ)
モルディブにとって地球温暖化は、住む場所が脅かされるだけでなく、国の産業や国民の食生活にも致命的な打撃を与えかねない重要な問題なのです。
地球温暖化は、気温を上昇させるだけでなく、異常気象の深刻化、海氷の融解による海面上昇、感染症媒介生物の生息域の変化や感染拡大、野生生物の住みかや生態系の破壊などの様々な影響を引き起こします。
人工島の設置で海面上昇に対策しているが環境破壊に配慮が必要
モルディブの首都、マレ市を構成する島の1つ『フルマーレ島』に見られるように、モルディブは埋め立てによる人工島の敷設が盛んです。
(モルディブの首都マレってどんなところ?)
埋め立てによって作られた人工島は、海面の上昇に対応するために海抜2メートルの高さになるよう設計されており、2100年までに予想される1メートルの海面上昇に対応できる造りになっています。
首都マレに近いフルマーレ島は海面の上昇に対応するため海抜2メートルの高さに埋め立てられ、将来的には現在の人口の4割近くが住めるように開発が進められているようです。
しかし、埋め立てによる人工島の敷設にも一つ難点があります。それは、埋め立てによって生態系が破壊される可能性があるということです。モルディブの周辺海域は、サンゴ礁を筆頭に世界でも有数の景勝地が数多く点在しています。
観光的な視点からの価値はもちろん、自然保護的な観点からも、これらの生態系が破壊されるような開発は行うべきではありません。
また、ごみ問題も深刻で、2019年に太平洋・マリアナ海溝の水深1万メートルの深海でプラスチックごみが発見されたことで、海のプラスチックごみによる汚染の深刻さがあらためて浮き彫りになりました。
このまま汚染が進むと、2050年の海は魚類よりもプラごみの方が多くなってしまうと見込まれており、魚だけでなく、海鳥やウミガメなどの両生類・爬虫類、イルカなどの哺乳類に大きな被害を与えているのがごみ問題の現実です。
これに対してモルディブ政府は、2025年までに国内全体で使い捨てのプラスチックの使用とビニール袋の輸入を禁止するといった法律を可決するなどの対策をとっています。
モルディブの多くのリゾート地では、朝食で利用されていた個々のバター容器や、ヴィラで利用されていたシャンプーやコンディショナーのボトルなどを詰め替え可能ボトルへ置き換えたり、プラスチック製のストローを自然に分解するものに置き換えたりと工夫されているようです。
また、プラスチック製のカードキーが木製のものと取り替えられ、水用のペットボトルも詰め替え可能な金属製もしくはガラス製のものに取り替えられるなど、様々な取り組みが行われています。
このような問題に対してなど、地球環境を守るために私たちにできる取り組みにはどういったものがあるでしょうか。
モルディブに限ったことではありませんが、今後私たちが旅行先の宿泊施設を利用する際にも、清掃不要サインを出す(または簡易清掃だけにする)ことや、部屋を長時間不在にする際はエアコンや電気を消す、バイキングなどでは食べ切れる量だけお皿に盛る、旅先でもエコバッグを活用する、といった旅行者にもできる取り組みはたくさんあります。
こういった旅行者としてできることに積極的に取り組み、マナーを守りみんなで気持ちよく青い海と美しい島々を残していきたいですね。
地球温暖化対策の主軸は海に浮かぶ島
そんな中で、埋め立てによる人工島の開発の他に、モルディブが力を入れているのがコンクリートのブロックを組み合わせた「海上に浮かぶ都市」の建設です。
2021年中には開発が始まる予定のこの計画は「The Maldives Floating City(以下、MFC)」と名付けられ、オランダの建築事務所Waterstudioとの提携により進められています。
同事務所が設計したMFCは、膨大な数の浮遊式モジュールのプラットフォームを、ノウサンゴ(脳珊瑚)のような形につなげたもので、六角形のパーツで構成され、外側にある環状に並ぶバリアー島に接続されます。
モジュールの底は固定装置につながれているため、構造物が海流に流されることはないそうです。
この一大プロジェクトは、Waterstudioの創設者であるコーエン・オルタシュ(Koen Olthuis)と地元の開発業者であるDutch Docklandsとマレの行政府とのコラボレーションであり、「2027年には、5000棟の家に2万人が暮らす」ことを目標にした居住エリアを増やすことが最大の目的です
また、約2㎢のラグーンに何千ものモジュールが浮かび、そのあいだには運河が流れる構造。住居のほかに、ショップやレストランなどもできる予定とのことです。
また、この水上都市は環境に配慮されたデザインらしく、サンゴ礁の成長を阻害しないように設計されており、都市内の移動は自転車か音の出ないスクーターのみという構想になっています。
他人事ではない、海面上昇による日本への影響
モルディブをはじめとした海抜の低い国々を中心に、海面上昇への対策が取られてはいますが、海面上昇は島国である日本にとっても大きな脅威です。
海面上昇は、島国である日本にとって大きな脅威です。
また、東京・愛知・福岡で80万人、新潟・大阪で50万人の人々が影響を受けると考えられています。
さらに、このまま積極的な気候危機対策をせず2050年を迎えてしまうと、佐賀県の約25%、福岡県の約14%、茨城県の約13%の広範囲にわたるエリアが浸水・冠水してしまう可能性もあり、海面上昇によって、日本の人口の約30%の人たちが、2100年までに住む場所を失うリスクを抱えることになります。
他にも、平和への願いが込められた原爆ドームや、新潟県だけでなく茨城県などの稲作が盛んな地域などでも冠水リスクが高く、守られるべき歴史的な世界遺産や日々の食生活に、直接影響を与える海面上昇リスクが日本にもあることがわかっています。
MFCはオランダとモルディブとの国家間で協力したプロジェクトですが、モルディブの海面上昇に対して助力してきた国に、実は日本もいるのです。
モルディブは1965年に独立し、日本との国交樹立は1967年です。
そして1985年以来、日本はモルディブにとって最大規模の二国間援助供与国となってきたのです。
例えば、1987年から2002年までの15年間にわたって日本政府からの援助・協力を行い、マレ島の護岸工事支援による防波堤のおかげで、2004年のスマトラ島沖地震の際はマレ島を深刻な被害から守ったという出来事がありました。
また、モルディブ政府やモルディブ市民からは、2011年の東日本大震災の際に救援物資として特産品であるツナ缶が提供されました。
モルディブ政府も、生態系の維持や海面上昇対策へ積極的な他、島でリゾートを運営している諸外国の企業に対しても多大なサポートを約束しています。
モルディブが今後もリゾート地として発展していくことは間違いなさそうですが、今の美しい砂浜を望みながらのバカンスはそう遠くない将来にはできなくなっているかもしれません。
環境の変化が進む前に、もう一度行っておきたい旅行先の一つですね。